はじめに |
スギ、ヒノキの人工林は、3,000~5,000本/haの植栽が一般的に行われていますが、これは植栽後の下刈り、除伐、間伐を適切にすることを前提としたものです。 ところが、近年、木材価格の低迷や林業労働者の減少などの理由で、間伐を実施しないで放置された林分が増えてきています。間伐を実施しないと、過密により細く、貧弱な木になってしまい、気象災害を受けやすくなります。 また、暗い林内では地表がむき出しになり、土が流れ出し易くなり、災害の原因にもなってしまいます。 間伐の推進のため、福岡県では補助制度の拡充などの施策を進めていますが、「高性能林業機械による列状間伐」を検討してみてはいかがでしょうか。 |
高性能林業機械を使った利用間伐の考え方 |
1 これまでの間伐 間伐のタイプは、林分内のどのような大きさの個体を中心に間伐するかにより、下層間伐、上層間伐、機械的間伐等に区分されます。 それぞれの特徴は、次の表のとおりです。
タイプ |
間伐対象木 |
残存木の状況 |
間伐時の収益性 |
特徴 |
下層間伐 (普通間伐) |
(1)病木 (2)被圧木 (3)曲がり木 (4)あばれ木 の順 |
優勢木を中心に残る。 |
× |
間伐後の形状氷比が気象害に対する抵抗力が高くなる。 |
上層間伐 (なすび伐りなど) |
販売に有利な優勢木を中心に間伐。 |
優勢木でない個体が多く残る。 |
○ |
形状比は下層間伐より高くなるが、無間伐より低くなる。 |
機械的間伐 (列状間伐など) |
伐採や搬出に都合のいい列状など。 |
形質に係りなく残る |
△ |
形状比は無間伐林分に比べ低くなる。 |
○:優れている △:中間 ×:劣っている これまで本県で通常行われている間伐は、劣性木を中心に選木し、林分密度管理図等から求めた残存本数になるまで間伐する定量的間伐法です。 間伐のタイプからいえば、上の表の下層間伐に該当します。 |
2 これからの間伐(効率的な間伐)
1 |
団地化 一定森林区域の森林所有者が、共同で事業を実施することにより、路網の効率的な整備、機械による作業が実施しやすくなります。 |
2 |
高性能林業機械を活用した利用間伐 プロセッサ、タワーヤーダ、スイングヤーダ、ハーベスタ、フォワーダといった高性能林業機械を活用した間伐を実施することにより、生産性をあげ、安全に作業することができます。 |
3 |
間伐方法の工夫 間伐材のコストを低減することにより、間伐を収益につなげる工夫をする必要があります。 たとえば、一定間隔で列状に間伐する方法(列状間伐)では、作業の標準化が可能で、機械による低コストの間伐が期待できます。 |
3 列状間伐とは
一定の間隔で伐採する列を決め、各列内の立木はすべて伐倒します。 |
伐採する間隔は、植栽列または距離ごとに設定します。 |
(例)3残1伐法 〔並行型〕 |
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列状間伐とは 個々の材木の形質にかかわりなく列状に伐採するもので、選木作業の必要が無く、伐採・搬出のしやすさ、低コスト化をねらった間伐方法です。これは、間伐木を搬出する利用間伐に適しています。 列状間伐を行うためには、数回下層間伐を実施して、不良木等を除去しておき、形質に差のない林分の状態にしてから行った方が有利です。 |
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列状間伐には、並行型、魚骨型、放射型があり、地形に応じた型を採用します。 |
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4 従来の間伐か列状間伐か きめ細かい保育作業を行って、高品質の優良材生産を目指すには、列状間伐よりきめ細かい従来の間伐方法が適しています。しかし、高性能林業機械が活用でき安全作業、高能率、低コストである点は列状間伐が優れています。 列状間伐は、あくまで長伐期を指向した並材生産を目的とした林分に適用するのがよいでしょう。 具体的に列状間伐を適用するのは、次のような場合が考えられます。
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まとまった間伐対象林分があるが、保育にあまり投資はできないので、間伐収入で作業経費を補いたい。 |
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公有林などで財政事情が厳しいが、環境保全のため低コストの間伐を実施したい。 |
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作業費の負担があまりなければ間伐を森林組合などに任せてもよい。 |
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伐期に達したが、皆伐しても新植、下刈りの人手がないので、本数を思い切って減らし、林床に植生を導入して林地を保全しながら長伐期化を図りたい。 |
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林地を裸地化することなく更新する、長期育成循環施業に転換したい。 |
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