■筑前スーパーくろまつよりさらに強い「ハイパーマツ黒」の開発 | ||||
●背景・目的 マツノザイセンチュウ(線虫)(写真-1)によりマツが枯れる現象(マツ材線虫病)は、世界的に深刻な問題です。福岡県では、平成9年にマツ材線虫病に感染させても枯れにくい「筑前スーパーくろまつ」を開発し、植栽を進めています。 この苗木はある程度強いクロマツの種子から生産するのですが、親が強いからといって必ずしも子供(苗木)がマツ材線虫病に強いとは限りません。そこで、こ れらから弱い個体を除くために行う接種作業(線虫を苗木に接種してマツ材線虫病に感染させる作業)は苗木生産には不可欠です(写真-2)。しかし、この作 業には真夏に苗木1本1本に行うため非常に過酷でした。 そこで筑前スーパーくろまつよりもさらに強く、接種作業が不要なクロマツの開発に九州各県と共同で取り組みました。 ※共同研究機関:九州大学、(独)森林総合研究所林木育種センタ-九州育種場、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県、 天草地域森林組合 |
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●「筑前スーパーくろまつ」よりさらに強いクロマツの選抜 非常に強い個体を選抜するため、筑前スーパーくろまつ生産で使用する線虫に比べ、より病原性の高い線虫を筑前スーパーくろまつに接種し、全くダメージの無かった約1000個体を選びました。 ●「さし木」による生産方法の開発 非常に強い個体を選んでも、その種子から苗木を生産するとやはり抵抗性が高くない個体ができる可能性があります。そこで今回は、従来のように接種で弱い個体を取り除くのではなく、直接強い個体からさし木によって苗木を生産することにしました。 さし木苗は、親木と全く同じ遺伝子を持つため、抵抗性の高いクロマツからさし木をすれば、そのさし木苗も病気に強いと考えられます。そこで用土や発根促進処理(写真-3)を工夫し、難しいと考えられていたクロマツのさし木を可能にしました(写真-4)。 |
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●「ハイパーマツ黒」の誕生 抵抗性が非常に高い個体の中から発根率が高い個体を選抜し、遺伝的な偏りをなくした約100個体を「ハイパーマツ黒」として開発しました。これによって、 その苗木の強さを見極める検定作業が不要になるため、強くて品質の安定した苗木を生産・供給することが可能になります。 |
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写真-5 「ハイパーマツ黒」の採穂台木 ※採穂台木:さし木を行うために必要なさし穂を採るための母樹 |
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